少し前から、何年かぶりに本棚から武田百合子さんの「富士日記」を引っ張り出してきて読んでいます。
この本は大好きな本。そして作家の武田百合子さんの文章は天才的で(タイプは違うけれど、この百合子さんと向田邦子さんが二大天才ではないかと私は思う)、何度読んでもその天性の文章のうまさにうなり、魅了されてしまいます。
不思議なもので、読み始めると急に、本に書かれている昭和39年からの富士のあたりに自分も行ったような気になります。
本の表紙がどこでもドアで、表紙を開けるとドアが開き、現代から当時のその場所に行けてしまうようです。
ひんやりした山の澄んだ空気や木々の匂い、山の家で食べる料理の出来上がったいい匂い、窓から入ってくる光。
本の向こう側の世界でしか会えない人々。ガソリンスタンドのおじさんやなんか(この本は出てくる人もみんないい。いいキャラだ。)に、久しぶりに会ったような気になるのです。こんな素敵な経験が出来るなんて・・・と本を読む楽しみを持てた自分をとてもラッキーだなと思ってしまうほどです。
夏にちょっと山の家に行ってくるように、これからも時々この本を読み返してみたいです。