ほぼ日刊イトイ新聞の中のコンテンツ「イセキアヤコさんの ジュエリー雑記帖」(※)で知った、イギリスで18世紀末~19世紀初頭に貴族階級の間で流行したという片目のみのポートレイト「アイ・ミニアチュール」。
とてもロマンチックで、その世界にひきこまれてしまいました。
その流行は、イギリス王室のひとつのスキャンダルによって起こったと言われているそうです。
以下、「ほぼ日」より引用。
『のちに国王ジョージ4世となる プリンスオブウェールズ(皇太子)は
1784年の春に、マリア・フィッツェバルト夫人と社交界で出会い恋に落ちた。
このとき、プリンスオブウェールズはまだ21歳で
フィッツェバルト夫人は6歳年上だった。
プリンスオブウェールズは彼女と結婚したいと切望したが
フィッツェバルト夫人はローマンカトリック教徒だったうえに
2度夫に先立たれた未亡人で、
ジョージ3世に結婚を許してもらうことはできなかったため、
2人は数名の仲間に立会人になってもらって1785年に夫人の自宅で極秘に式を挙げる。
けれども、この結婚は最後まで法的に認められなかった。
プリンスオブウェールズが、プロポーズの際にフィッツェバルト夫人へ贈ったのが
皇太子本人だと特定されにくいように自分の片方の瞳だけを描かせたミニアチュールの
ジュエリーだった。
また、プリンスオブウェールズも、フィッツェバルト夫人の片方の瞳が描かれたブロー
チを、いつも襟の下に隠して着けていたという。
アイ・ミニアチュールのジュエリーそのものはそれ以前にフランスにも存在していたよ
うだが、プリンスオブウェールズの一件から19世紀のはじめごろまで、
イギリスの貴族社会では愛情のしるしとして男女の間で交換するもの、時には親から子
へ、ひいては亡くなった愛しい者への想いをとじこめた思い出の品としても広まって
いった。』
そのアイ・ミニアチュールを見ると、相手もこちらを見つめてくれている。
自分だけが分かるようにそっと身に着けたり、急にそのきれいな瞳を見たくなった時にそっと開いて見るペンダント・・・。
亡くなった人の瞳の書かれているアイ・ミニアチュールを持つ、というのは、もちろん、肌身離さずその人の面影を持っていたい・・・という気持ちもあり、時々見てその人を偲ぶということもあったのでしょうね。
実は私、この気持ちすごくよく分かるのです。
私はアイ・ミニアチュールはもちろん持ってはいませんが、亡くなった父の目にそっくりな目をしています。
鏡の中の目だけを見ると、まるで父と目を合わせているみたいなのです(それほどそっくり)。
父が亡くなってから、何かの拍子に鏡の中の目だけを見た時、まるで父と目を合わせているような感じがすることがあります。懐かしく、ひととき、父の元気なころを思い出したりします。
それで、多分そういうことなんだろうなぁ・・・と思いました。
そんなことがあるせいかこのジュエリーのお話がとても心に残りました。
(写真は、ほぼ日より。
19世紀初頭に作られた「アイ・ミニアチュール」のジュエリー。
象牙の上に水彩絵の具によるペイント。
亡くなった夫の思い出に、と妻が職人に作らせたもの。
ヴィクトリア&アルバート博物館蔵 museum no. P.55-1977)
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